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 03'夏ツーリング 北海道→鳥取 自転車野宿一人旅


■7日目(03/08/27/水)編

それなりに長期のツーリングになると、一日くらいは無心に走り続ける日がある。途中に見所が全くなかったり、距離を伸ばしたい日だったりと理由は様々だが。
この日はそんな日で、この旅での最高一日走行距離を記録したにもかかわらずなんと写真を2枚しか撮っていない。何かあるごとに写真を撮る自分としては驚異的な数字だ。


そんな日の朝は5:40に起床した。T大学のツーリング部の人たちも少しずつ起き出してくる。テントを見ると大雨にでも降られたかのような朝露。横に寝かせておいた自転車もびしょびしょだ。
朝食を昨日の夜に買っておくのを忘れたため、テントはそのままにしてキャンプ場近くのコンビニへ行き、カップ麺とパンを買ってコンビニ前で簡単な朝食とする。コンビニの駐車場でカップ麺をすすっていると朝日が昇ってきた。今日も一日、頑張るぞという気になる。

キャンプ場に戻り朝露で濡れたテントを拭きながら撤収。乾くのを待っていたい気もするが先を急ぐ身、のんびりしてもいられないので適当なところで諦めて濡れたまま畳んだ。

朝食をわざわざコンビニに買いに行って食べたタイムロスで出発は8時になってしまう。撤収まで2時間30分かかるのはちょっと遅すぎるな。T大学のツーリング部の人たちは未だにテントを畳んだりしていた。集団だとのんびりしちゃうのかな。まぁ一日に80kmくらいしか走らないとか言っていたし、それくらいのペースで十分なんだろう。


出発後1時間ほどで道の駅「ニセコビュープラザ」に付く。ここではトイレに入ったりした程度ですぐに出発。途中道沿いにあった郵便局でお金をおろしたりしつつ黙々と走る。函館までひたすら国道5号線を走ることになるので曲がり角などがあってもひたすら5号線の方向を示した「逆三角おにぎり」に従えばいいので地図を見るために止まったりすることがないから楽と言えば楽だ。


1時間30ほど走って小樽→函館間にある三つの峠の内最後の峠「目名峠(214m)」を攻略。相変わらずダラダラと緩く登る峠なのでそんなに辛くはなかった。本州に入ったらこういう訳にもいかないだろうから「楽な峠」はこれで最後かな。

峠を越えて坂道を下ると道の駅「くろまつない」が有った。ちょうど12時だったのでパンなどを食べて休憩とする。道の駅の中になかなかおいしそうなパン屋さんがあったが、普通に一個120円とかするので俺は一袋6本とか入っているバタースティックパンをモソモソ食う。
実はこのころからどうも腹の調子が良くなく、何となくゴロゴロいっている感じがしていた。しばらく道の駅のトイレに入って座ってみたりしたがどうもすっきりしない。このころは「うーん、何となく嫌な感じだなぁ」位にしか思わなかったが、今日の夜悲劇は訪れる!


道の駅「くろまつない」を出発して2時間で海が見えてきた。おお!長万部(おしゃまんべ)に到着だ!北海道縦断達成!等とバカなことで喜ぶ。(縦断って言うなら宗谷から襟裳(えりも)まで行けよってな)

この時点で走行距離は80kmちょっと。時間ももうすぐ3時という感じだった。そろそろ今日の寝るところを考えなければいけない時間。地図を見るとすぐ近くに「長万部公園」というキャンプ場がある。だがまだまだ走れるのにそこに泊まるのは惜しい。じゃぁもう少し先に・・・と思っても、この先なかなか泊まれそうなところが見あたらない。強いて言えばあと60kmくらい先に道の駅があるくらいか・・・。

しばらく長万部公園のキャンプ場に泊まるか悩むが、「この先適当なところで野宿場所を見つけりゃいいや」と思って先に進むことにした。近くのセイコーマートに入って夕食用の食材を適当に買い、スタートした。
ただ、その考えはちょっと甘かったらしい。俺の一日目標走行距離100kmに近づいても、延々海沿いの道が続くだけで野宿場所なんか見あたりはしない。



↑・・・。野宿場所っつーか、そういうのを探す次元じゃ無いですな。延々続く道をひたすら走りながら今日の寝るところを探す。


だんだん日も暮れ始め、自転車の陰が長く伸び始める。走行距離は110km。このあたりで「よし、今日はちょっとくらい無茶して、次の道の駅まで走ってしまおう!」と思い始める。地図上で適当に測ってみると140km超えは確実だ。まぁ頑張ってみるかな。

そう決心すると後は頑張るだけだ。道は平坦で黙々とペダルを回して距離を稼ぐ。途中小学校の脇を通ったら校庭で遊ぶ少年少女10人ほどに「がんばって〜」と応援されてしまった。「おー!」と手を振り返す。このあたりは俺みたいなヤツがよく通るのかな。こうやって小さい子供に応援されたのは初めてだったので結構嬉しくなってしまった。

5時を過ぎ日はどんどん傾いていく。普段ならもう寝る場所を決めて一風呂浴びている頃だが、今日の道のりはまだまだ遠い。自転車のトリップメータを見ながら後ちょっと、後ちょっと・・・とひたすら漕ぐ。漕ぎまくる。正直もうヘトヘトなのだが、アドレナリンが分泌されるのだろうか。なんだかちょっとハイになってきて「自転車って、楽しい!」と思って背筋をゾクゾクさせながら漕いだ。自分では気づかなかったが、ひょっとしたらヘラヘラしながら走っていたかもしれない。


目指す道の駅まであと10kmほど、走行距離130kmほどのところにあるお土産屋(大きな駐車場付きの観光客向けの場所)の前を通り過ぎるとき、一人の男性に声をかけられた。ブレーキをかけて止まる。おじさんはアマチュアのトラックレーサーで、一応同じ自転車乗りである自分に興味を持って話しかけてきてくれたらしい。
どこに泊まるの?と聞かれ、この先にある道の駅に泊まることを告げると「あんまし大きくないけど大丈夫?」などと聞かれてしまった。うーん、でも今日はそこくらいしか当てがないのですよ。

「この先の道は路肩も狭くて交通量も多いし、危ないよ。自転車を俺の車に乗せて連れて行ってあげようか?」と言われる。嬉しい言葉だが、やっぱり自分で走破しないとダメだし、丁寧に断った。「気をつけてね」と言われ、別れる。確かにその先の道はひどいもので、薄暮時と言うこともありかなり怖い思いをして走ることになった。

途中トラックレーサーのおじさんのランクルに追い越される。ププッとクラクションを鳴らして挨拶してくれた。


道は平坦と言えど多少の登りはあるのだが、もう足がガクガクで全然登れない。ギアを落として必死に走る。そして18:25、日もとっぷり暮れた頃に道の駅「YOU・遊・もり」に到着!もう動けねぇッス!
ふと自動販売機に目をやると500mlのアクエリアスが100円。今日はよく走ったし、飲むか・・・と買って一気飲みした。お腹の調子が悪いことなどすっかり忘れていた・・・。

道の駅で一息つきながらどこで寝るか考えていたらハーレーに乗った兄ちゃんがやってきて、少し話す。室蘭に住んでいる人で、失業記念に東北をツーリングしてきたそうだ。他にもバイクツーリングの人一人がやってきてしばらく話した後別れる。このころからお腹の調子が急降下し始める。キュルキュルキュル!俺の腹はまるでバイクのセルモータのように激しく動き始めた。
某掲示板風に表現するとキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!である。


すぐにトイレに駆け込み、一仕事終える。このあたりの詳細なレポは自主規制とする(爆)。ひとまず腹も落ち着きを見せたので外に出ると、なんか荷物を山積みした折りたたみ自転車に乗ったおばあちゃんがいた。見かけはどちらかというとホームレスっぽいし、まさかチャリダーとは思わなかったので「この人もここに泊まるのかな・・・。うー、今日は一緒か?」なんて考えていた。

すると、おばあちゃんが「あなた、今日はここに泊まるの?」と話しかけてくる。「ええ、そうするつもりです」と返事をする。まさか・・・と思いながらも「もしかして・・・自転車で旅なさってる・・・・んですか?」と聞くと「そうよ」と返事をされた。うっひぇ〜!マジですか?あんた何歳だよ!


チャリダーが出会ったときの定型句である「どこからどういう風に走ってきたのですか?」と言うことを聞くと、テープのスイッチが入ったかのようにしゃべるわしゃべるわ。○○を走って、△△で観光して、□□を通って、××を抜けて・・・とひたすら数分間にわたって話し続けた。途中から「ハァ、ハァ・・・」と相づちを打つだけで詳しく聞かなかったが、まぁ要約すると北海道を内陸を含めてほぼ一周しているようだった。

すっかりお腹を壊していることを忘れて話し込む。京都に住んでいる人で、北海道に飛行機で来て1ヶ月以上走っているらしい。一日大体80kmくらいは走るらしい。自転車を見ると変速機すらない折りたたみの小径車。スゲェ・・・。失礼を承知で年齢を聞いたら「女性に聞くかぁ?」と笑いながら怒られたが、教えてくれた。インターネットで公開するのはちょっとまずいが、もうすぐ70である。すべてにおいてスゲェ人だ。

なんで自転車で旅をしようと思い始めたか聞くと、なかなか重い話をしてくれた。

20代で結婚したものの、若くして旦那を亡くして再婚はしていないため子供はいない。なのでずっと一人で各地を旅行して回っていた(これは普通の旅行)。60を過ぎた頃、膝を壊してまともに歩けなくなり、数年間寝たきりの生活を送っていたそうだ。だがリハビリで水泳と自転車を始めたら「直らない」と言われていた膝が治り、自転車が好きになったそうだ。その後もリハビリをかねて自転車で自宅の近くを走っていたのだが、家の回りだけではつまらない・・・と飽きて北海道まで来てしまったそうな。

「だからって野宿旅するのもすごいですね・・・」と言うと、「そりゃあんた、何年も『痛い痛い』って言いながら寝たきりですごしてご覧なさい。自分の足で動けることのありがたみが分かるわよ」と言われた。ウッ、重い話だぜ・・。

あまりにおばあちゃんとの話が面白いので、そのまま隣り合わせでテントを張って寝ることに。


↑道の駅でスーパーおばあちゃんYさんと。右端に見える折りたたみ自転車、おばあちゃんはこれで北海道を旅している。負けたよ・・・、俺は負けた。


腹をこわしていることを告げると土産物屋で買ったという謎のホタテの肝焼きやら、なぜか持っている梅干しなど色々くれた。「これね、自分で色々なものを混ぜて栄養抜群にした手製の薬なのよ。飲む?」と聞かれた謎の茶色い物体はさすがに丁寧にお断りした(汗

持っていた下痢止め「ワカ末」を飲み、夕食はパンをちょっとだけかじり、今日は胃を休めることにした。おばあちゃんに「お休みなさい」と言ってテントに入る。が、その後も何度も「波」が来てトイレに駆け込む。おそらく色々疲れとかが溜まってお腹の調子を崩していたところで146kmの無茶走りとアクエリアス500ml一気飲みという悪条件が重なって下痢になったのだろう。

何度も夜にトイレとトラックの騒音で目を覚ましつつも、そんな夜は更けていった。


走行距離:147.35km(累積668.48km)
走行時間:8:00:10
平均速度:18.4km/h
最高速度:46.5km/h




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